大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成7年(行コ)16号 判決 1995年11月30日

控訴人(原告) 清水建 外一六名

被控訴人(被告) 千葉市長

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

一  控訴人奥野卓己、同山近勉、同広瀬勝子(以下、この控訴人らを「控訴人奥野ら三名」という)は「原判決を取消す。本件を原審に差し戻す」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

三  証拠<省略>

四  当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないと考えるが、その理由は原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。要するに、原判決記載の別件訴訟の原告らは、本件清掃工場の建設に係る平成四年度以降の総事業費三〇六億三三〇〇万円の支出に関し、第一次監査請求を経た上で、平成四年六月五日この支出の差止めを求める別件訴訟を提起し、右支出差止めを求める理由として、当初は、本件清掃工場建設に係る事業費の支出は地方財政法四条一項の「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」との規定に違反する等の主張をしていたが、その後本件清掃工場建設工事の一部である本件杭打工事請負契約及び本件プラント工事請負変更契約が締結されると、本件杭打工事請負契約については、談合の疑いがあり、不適正な価格である疑いがあるとの違法事由を、また本件プラント工事請負変更契約については、随意契約ではなく一般競争入札によるべきであったのにこれをしなかった違法があるとの違法事由を、それぞれ追加して主張するに至ったものであり、他方、控訴人らは、右本件杭打工事請負契約及び本件プラント工事請負変更契約について、右別件訴訟において追加された主張と同じ違法事由を主張して、第二次監査請求を経た上で、本件訴訟を提起したものである。そうすると、原判決も説示するとおり、この事実関係によれば、本件訴訟の差止めの対象は別件訴訟の差止めの対象に包摂されその一部となる関係にあり、しかも右本件杭打工事請負契約等の締結と前記の別件訴訟における主張の追加によって、別件訴訟と本件訴訟とは全く同一の事項についての二重訴訟となるに至ったものであって、結局本訴は地方自治法二四二条の二第四項の別訴禁止規定に触れて不適法であるといわざるを得ない。

なお、控訴人奥野ら三名は第一次監査請求を経ていないので、同控訴人らが別件訴訟に共同訴訟参加人として参加することは許されないとしても、民事訴訟法上の参加をすることは許される余地がないわけではないと考えられることも、原判決説示のとおりである。この点に関して、控訴人奥野ら三名は、同控訴人らの裁判を受ける機会の存否が問われていると主張するが、住民訴訟は、住民全体の利益のために法律が特別に創設したいわゆる客観訴訟であるから、法律に定める場合において法律に定める者に限りこの訴訟を提起することができるのであって、この要件を充たしていない者が訴訟を行う機会を得られなかったとしても、それは法の予定している事態であるといわざるを得ないのである。

五  よって、本件各控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 宍戸達徳 佃浩一 西尾進)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例